今回ご紹介するのは、「MR.DING」という最近話題の中華レンズブランドが送り出した「Pactcron 35mm F1.8」という、Leica社の「Summicron 35mm F2(7枚玉)」をオマージュしたレンズです。 この”通称「7枚玉」”は、それらの中でも特に入手困難で、高価になっているレンズです。では、レビュー行ってみましょう!
※このレンズは、「MR.DING」の輸入代理店である「2ndfocus」さんからレビュー用に貸し出しいただいて書いています。貸与に当たっては、レビューに内容に関する指示などは一切ありません。ということで、いつものように、このレンズをガッツリ楽しみながらレビューを書かせていただきました。
「MR. DING(ミスター・ディング)」について

「MR. DING(ミスター・ディング)」は、ライカファンで設計技術者である丁(Mr. Ding)社長が立ち上げた中国のレンズメーカーです。長年OEM供給を行ってきた同社が、ライカのオールドレンズにインスパイアされた製品を独自のブランドで展開しており、現代的な快適さとクラシカルな描写を両立させたレンズが特徴です。最近発売した、ニコンZマウント用の「Noxlux DG 50mm F1.2」では、往年の銘玉にインスパイアされたデザインと最新性能を両立させ注目を集めています。※因みに日本では、2ndfocus社が販売代理店となっています。
「MR.DING Pactcron 35mm F1.8」の特徴と主なスペック
まずは、このレンズの特徴をみていきしょう。※2ndfocus社からの引用にて
レンズの歴史に名を刻む銘玉「ライカ 35mm F2(通称:7枚玉)」への深い敬意を込めて、その設計思想を継承しつつ、現代的な進化を加えた大口径レンズ「MR.DING 35mm F1.8」が登場。伝統的な5群7枚の球面設計に、ランタニウムガラスと高屈折率ガラスを採用し、なめらかな階調表現と立体感を両立します。F1.8の開放では柔らかなボケを描きつつ、中心部では高いシャープネスと透明感ある描写を可能にしました。さらに多層ナノコーティングにより、逆光下でもフレア、ゴーストを最小限に抑え、高いコントラストと自然な色表現が可能で、表現の自由度が向上しています。真鍮製のコンパクトなボディは手にしっくりと馴染み、クラシックなライカMボディとの相性も良好で、絞りリングのつまみも自然に指が届く位置に設計されており、快適な操作性を実現しています。クラシックな味わいと現代的な描写性能を両立した、新たな“理想の35mm”といえるでしょう。

Amazonの販売ページへ遷移します(2ndfocu社)
では次に、基本的なスペックを一覧表表で見てみましょう。
項目 | スペック |
メーカー名 | MR.DING |
製品名 | Pactcron 35mm F1.8 |
レンズ構成 | 5群7枚 |
マウント | ライカMマウント |
特殊硝材 | ランタニウムガラスx4, 高屈折率ガラスx1 |
絞り範囲 | F1.8-F16 |
最短撮影距離 | 0.7m |
鏡筒素材 | 総真鍮製 |
フィルター径 | 39mm (E39) |
質量 | 約270g |
価格 | メーカー希望価格128,000円 |
発売 | 2025年 |
備考 | メーカー保証:2年間(自然故障が対象) 付属品:レンズキャップ、リアキャップ 高性能ナノコーティング(Carl-Zeiss T*に近い) |


5群7枚というレンズ構成や、特殊硝材の採用、総真鍮製の鏡筒など、スペックからもこのレンズへの気合の入り具合が伝わってくるようです。
そもそも伝説の「ズミクロン7枚玉」とは?
このレンズを語る上で欠かせない、オマージュ元の「ズミクロン 35mm F2(7枚玉)」について簡単にご紹介します。

「7枚玉」は、1979年から製造されていたライカのM型レンズで、そのシャープなピント面と、そこから滲むように広がる美しいボケ味の絶妙なバランスから「King of Bokeh (ボケの王様)」と称されています。コンパクトなサイズ感も相まって、多くの写真家から愛され続けるレンズです。
シャープネスと解像感:
絞り開放(F2)では、ピント面は十分にシャープでありながら、全体的には優しく柔らかい描写をします。絞りをF4〜F5.6あたりまで絞ると、画面全体で驚くほどシャープで緻密な描写力を見せます。
美しいボケ味
「ボケキング」の愛称が示す通り、そのボケ味は非常に滑らかで美しいと評価されています。ピント面からアウトフォーカス部へ自然につながるボケは、被写体を立体的に際立たせます。
色再現性と透明感:
色の偏りが少なく、透明感のあるクリアな色再現性が特徴です。特にハイライトの階調表現が豊かで、柔らかく光を捉えます。派手さはありませんが、被写体の質感を忠実に描き出す上品な色乗りです。
本家7枚玉を探してみる
まずは、メルカリのLinkを貼っておきます。30-40万くらいですかね。

(写真クリックで、7枚玉の件セク結果に遷移します)
次にAmazonの販売Lisnkを貼っておきます。こちらは40万弱から80万くらいのものが販売されていますね。こうやって、本家7枚玉の中古価格と比較してみると、MR.DING Pactcron 35mm F1.8のコスパの良さが際立ってきますでしょうか。




「Pactcron 35mm 」外観デザインと操作性
さて、Pactcron 35mm F1.8に話を戻して、本体を見ていきましょう。
箱から取り出して手に取った瞬間に”ずっしり”とした重みを感じます。高価なガラスのレンズを多用していることが伺い知れます。
さらに、総真鍮製の鏡筒は、ひんやりとしていて、レンズの重みも相まって、”ぎっしり詰まってる感”はあるものの、ある種 ”心地よい” 重みを感じます。これは「良いモノを所有している」という満足感を満たしてくれる、確かな手応えといえるかもしれません。

今回レビュー用にお借りしたレンズは、Amazonの販売ページでは「レンズsilverフルセット」と名付けられている「レンズ専用フィルター&フード付」のものです。フィルターもフードも付いているので、そのままで即利用可能です。レンズのみの場合よりも17,300円高くなっていますので、フードが不要だったり、フィルターも他のものを利用する場合は「レンズのみ」を購入して、お好みのものを装着することも可能です。※レンズのフィルター径は39mm (E39)です。
Leica M10や、LeicaM4 に装着した際の佇まいは、まるで純正レンズのような一体感。クラシカルなデザインが本当によく調和しています。平たく言うとカッコ良いですね!


絞りとピントリングは、程よいトルク感で撮影を楽しむことができます。とはいえ、周八枚などと比すると少しザラっとした感触です。拡大表示で詳細なポイントを撮影確認しながらできる、液晶モニターでのピント合わせはレンズ自体の解像度も良いので実に快適でした。とても撮影しやすいレンズ化と思います。
画質と写りの特徴【作例と共に探る】
それでは、いよいよこのレンズが描き出す世界を見ていきましょう。
シャープなピント面と、そこから滲むように広がる美しいボケ味の絶妙なバランスから「King of Bokeh (ボケの王様)」と称されている7枚玉のような写りとなるのでしょうか。
とは言っても、残念ながら本家7枚玉を使ったことが無いので、比較できないのが残念です。私の財政的なことも考慮頂き、ご了承いただければと思います。
開放F1.8の描写 – 甘く、柔らかな光の表現
まず、このレンズの個性が最も際立つ開放F1.8での写りです。






ピントを合わせた中心部はしっかりと解像しつつも、全体的には一枚のヴェールを纏ったような柔らかさが感じられます。特にハイライト部分にはオールドレンズ特有の美しい滲みが現れ、どこかノスタルジックで情緒的な雰囲気を描き出してくれます。
絞った際の描写 – Leicaオマージュレンズ”ならでは”の鋭さ
次に、F4あたりまで絞って撮影した場合です。

開放での柔らかな表情から一変、画面全体が驚くほどシャープになります。まるで現代の高性能レンズで撮影したかのような、高い解像感を味わえます。Leicaオマージュレンズ”ならでは”の鋭さっていう感じでしょうか。この絞り値による描写の劇的な変化こそ、このレンズを使いこなす面白さと言えるでしょう。
ボケ味 – 個性が光る、味わい深い表現
ボケ味は、とても良いです。周八枚や本家ズミクロン(沈胴50㎜)のような、少しザワザワとうるさめの「鱗状」のボケにならず、イイ感じで”すっ”とボケてくれて、イイ感じの玉ボケになります。
絞りが、オリジナルの解放「F2」から「F1.8」に改良された賜物でしょうか。嬉しい誤算ですね!



その他作例





まとめ
この「MR.DING Pactcron 35mm F1.8」というレンズは、7枚玉への深いリスペクトをベースに、現代の技術と独自の解釈を加えて「ザワザワしにくく、7枚玉の特徴であるボケと滲みを踏襲」という新たな価値を備えた、非常に魅力的なレンズといえるかもしれません。
また、本家と同様(!?)、柔らかで滲みも楽しめる解放の描写と、F4以上に絞った際の迫力のあるシャープさという2面性を楽しめるのもポイント高いですよね。
本家7枚玉よりも圧倒的に安いですし。みなさん、大いに悩みましょう~。
商品リンク(レンズ本体/フード/フィルター)








(おまけ)M型Leicaで、ゴールドのサムレストを利用している方は、下記のレンズフードなんていかがでしょうか!!?


【参考情報】もっと深く知りたいあなたへ!他のおすすめレビュー記事
このレンズのレビューはまだまだ少ないようです。まだ知られていないレンズを”いち早く発掘して”楽しんでみるのは如何でしょうか。
- 撮影師太郎 – マニュアルレンズの楽しさを再発見!MR.DING 35/1.8で撮る情感豊かなポートレート
- PRONEWS – MR. DING、ランタニウムガラス採用のMマウントレンズ「Pactcron 35mm F1.8 M」発売。ライカ銘玉「7枚玉」の設計思想を現代に
※上記URLは2025年9月時点のものです。リンク切れの場合はご容赦ください。
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